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筆のお話

毛質から筆を分類

  1. 柔毛筆
    羊毛が主で他に兎、鹿、猫などがあります。柔軟なため腰が安定せず運筆が思うようにいかないが、慣れると、深みのある豊潤な表現が自在にできます。

  2. 剛毛筆
    馬、狸、鹿などの硬い毛が利用されます。硬い毛の筆は、初心者には使いやすいが複雑な線や表情豊かな表現が難しいです。

  3. 兼毫筆
    柔毛と剛毛を組み合わせた筆をいいます。柔らかすぎず、硬すぎずで墨含みがよく扱いやすい筆で、一番多いタイプの筆です。

筆の選び方

古来、中国では良い筆の条件として、尖・斉・円・健があげられています。
「尖(せん)」は穂先のとがり具合のことで、穂先の墨含みが良く、鋭く先がきき、まとまりがあることが大切で、特に細筆はこれが大切です。「斉」は毛の先端がそろっていることで、穂先の毛の肉つきが平均していることです。
「円」は穂首全体の調和がとれ、きれいな円錐形をしているということです。
「健」は穂首全体のバランスがよく、弾力があり運筆が容易であるということです。
これらの条件と、ご自身の書風や目的にあった筆を選ぶことが大切です。
また筆には水筆といって穂が糊で固められた筆と、さばき筆といって糊で固めていない筆の2種類ありますが、いずれの筆であっても穂の強弱、毛の種類・柔剛・長短・細い太い、軸の姿・全体の軽重も加味して選んでください。

筆のお手入れ(使用後の筆の洗い方)

根元までおろした太筆・細筆

水道の水を穂首にあて筆の腰(穂首と軸の付根)を人差し指と親指でつまみ、残墨を搾り出すように流水で洗います。
その後指で毛筋を真っすぐにそろえるようにしながら水を絞り出します。乾かす時は穂先を下にして陰干しをしてください。

根元を固めた太筆・細筆

筆に墨が残らないよう穂先に水をつけて、紙の上で毛筋をまっすぐにしてぬぐいます。
この作業を数回繰り返しますと墨は殆ど無くなります。乾かす時は穂首を下にして陰干しをしてください。

筆に墨が残っていると穂首の割れや、軸割れ、穂首の腐敗などの原因になります。良く乾燥させてからしまってください。
長期間使用しない場合は防虫剤と一緒に保管します。また、時々虫干しをしてください。

筆の材料(毛の種類)

羊毛

一頭の山羊から10数種類のそれぞれ違った毛が取れます。毛丈が長く、毛先がよく利き、墨含みは抜群。
羊毛だけの柔らかい筆や剛毛などの毛を混ぜて墨含みが良く、まとまりの良い筆ができます。
高級品から一般品まで広く使用、太筆から細筆まで向いています。産地は中国江南(揚子江の南)に棲息する緬羊でなく山羊です。

天尾

馬の尻尾の毛で太く、長くて剛毛、大きい筆の強みに使用。主として赤、黒、白色の毛があります。

馬毛

馬胴毛、主に筆の上毛(衣毛)に使用されます。
毛が剛強で毛の丈が良く腰が強いので芯の混せ毛に使用すると粘りがあり、まとまりの良い筆ができます。
産地は日本、中国、朝鮮、北米、中南米。

鹿毛

鹿毛は、毛自体ふくらみがあり、墨含みがよく、非常に弾力があります。腰は強いが耐久性に乏しい。
冬毛の脇下から下部の"白真"は、優れていて太筆の原料となり、画筆に使用。芯や中程より根元の腰毛に使用されます。
産地は、日本、中国、インド、タイ。

いたち毛

毛丈が短いので細筆か中心、毛先がよく利き、非常に弾力があり墨含みがよく、細筆・面相筆・写経筆などの高級品に使用される。
産地は日本、中国、韓国。

狸毛

毛先になるにつれて太くなり弾力があって丈夫です。
中国、朝鮮などの狸は毛か硬く太筆に使用され、日本産の白を上質とし、柔らかく味があり細筆に使用されます。
また、先が弾力に富んでいるので剛毛筆の命毛に用いられます。

猫毛

「玉毛」とも呼ばれ、粘りがあり、先がよく、弾力に富み墨含みも良いので、面相筆、極細字筆などに用いられます。産地は日本。

麝香猫毛

強い弾力があり先が良いので、少ない毛の量で効果があがります。他の毛と混せて細筆の命毛として使われています。産地は中国、台湾。

兎毛

毛先がよく利き、弾力に富んでいます。極く少量が羊毛に混ぜて使われる程度。産地は中国。

その他、種々の動物の毛

リス、てん、鼠、らくだ、等や植物の繊維(竹、藁、草、棕櫚等)が使用されていますが、近年ナイロン毛による筆も作られています。

墨運堂製「ペットケース入り筆」の特長(透明プラスチックケース)

墨運堂が推薦する「ペットケース入り筆」は、筆職人と墨職人の両製造者が書き易さをテーマに創意工夫を重ねた共同開発作品です。
このパッケージ入りの筆は、毛の水ぬれが良く、画筆のように根元まで水洗いできる新しい形の筆です。
根元までさばいても腰が強く、穂先のまとまりも良く、弾力に富み、書写されても手首や腕が疲れません。
水ぬれが良いので墨含みも良く紙面へのタッチがなめらかです。水洗いの時も墨が簡単に落とせます。
墨運堂がお勧めする書写用筆の傑作揃いです。

先が割れる筆の治し方

今まで書きやすかった筆が割れるようになった時,次の3点の状態が多く見られます。

1)穂首と軸の付根に墨が溜まり硬くなっている。

2)筆穂が胴ぶくれになっている。

3)筆穂の毛がもつれているもの。

解説

1)の場合:水道の流水にさらしながら、穂首と軸際を持ち穂首を軸のほうに押しつけながらハンドルを廻すようにゆっくり左右に廻します。軸際に残っている墨が出てくると水で流し、残墨が出なくなるまで繰り返します。

2)の場合:穂首全体に墨の粒子と切れた毛が付着しているためで、両手ではさみ、もみ洗いし、水中で櫛を通します。

3)の場合:水中で櫛を通し毛を広げ残量を洗い流します。

※1、2、3、とも最後に軸から指をすべらし、しごくようにして水を切ります。その後、紙か布で穂首を包み水分を吸収させ、筆架に穂首を下にして陰干しします。軸際に水分や墨が残っている根腐れの原因になります。

筆の各部の名称

筆には大きく分けて普通軸とダルマ軸があります。下図は各部位の名称です。

毛の長さによる鋒(ほこ)の分類

軸の直径に対する穂の長さにより、鋒が分類されます。

筆の組毛(兼毫)

筆の毛組には長さや種類の違う毛を使います。毛先のキキ、弾力、まとまり、墨の含み、腰の強さなど毛の種類こよって変わります。

筆の保存方法

筆の保存方法で一番気をつけなければならないのは、虫の害です。
筆をよく乾燥させ、防虫剤と一緒に桐箱等に入れ、乾燥したところに置いて下さい。また、ほこりとカビにも気をつけてください。
時々風を通し虫干しを行い、防虫剤の入れ替えを行いましょう。

毛筆の規格(竹軸)

号級
軸の直径(mm)
標準字数
用途
1号
15.0以上
半紙1字
半切用
2号
14.5
半紙2字
半切用
3号
13.0
半紙4字
半紙用
4号
11.0
半紙6字
半紙用
5号
10.0
半紙6~8字
半紙・色紙用
号級
軸の直径(mm)
標準字数
用途
6号
8.5
半紙8~12字
半紙・色紙用
7号
7.6
中字用
色紙・かな用
8号
6.7
中字用
かな書簡はがき
9号
6.0
細字 書簡用
かな書簡はがき
10号
5.5以下
細字 書簡用
写経・面相
※木軸は別寸法です

筆の毛ぬけの原因

毛が3本5本と抜け始めるのは筆の中心部で軸に近い所が腐っているからです。抜けた毛の根元をよく見ると黒くなり細くなっています。洗ったあとの乾燥が十分でないと腐るに適した水分と温度と時間の条件が揃うからです。
穂首の中心部までよく乾燥させるか、低温の所に置けば防止できます。

学童用の筆の洗い方について

洗い方が不充分だと、段々と固まってきて、筆の働きが悪くなり、ゆったりとした字が書けなくなります。
この状態になれば、器に熱いお湯を入れ、筆を浸して一晩置きます。毛は痛みませんから心配いりません。
筆を固めている墨を柔らかくする為です。ぬるま湯では柔らかくなりません。
少し柔らかくなれば、爪で五ミリ間隔位に荒割りをし、両手にはさんでもみ洗いします。
黒い汁が出なくなれば、水中で櫛をかけて毛を揃えて乾かします。