墨・和文具のお話し

墨・和文具のお話し (その他)

■経典を書写すれば、よく大願を成就す

これは、法華経の法師品にある、写経の功徳をあらわした言葉です。いまどき、そんなことを…と笑われる方もいらっしやるでしょう。
でも、少し考えてみてください。現代に、写経が静かなブームとなっているわけを…?
写経とは一字書くたびに一体の仏さまをお刻みすることだといわれています。このことを心においてただ一人、一心にお経を写すとき邪念は滅却され心の安定が得られるのです。腹のたつとき、人を恨みに思うとき、写経をしてみてください。写経を書き終えたときには腹だたしさも恨みも消えているでしょう。写経の文字はだれにも読める楷書できっちり書かれた長文の細字です。これを書きぬくことで忍耐と精神力が培われ、姿勢を正しくして書くため、健康の維持、増進にも役に立ち喜びも生まれます。

■篆刻の歴史

古い印章は中国戦国時代まで遡ることができ、秦の始皇帝の時代には印章制度が整い、印章の材質やサイズ・形、鈕式などで階級や役職を表した。このとき印文に小篆を用いることが正式となり、以後踏襲され印章用の篆書が登場した。現代に至っても印章に篆書を用いるのが一般的なのはこの慣習が続いているからである。唐代に、印章に芸術性が求められるようになり、元末には花乳石(青田石の一種)という柔らかい石を印材に用いた。明代には文人の間に篆刻芸術が広まる。
日本では江戸時代に本阿弥光悦や俵屋宗達などの芸術家も独自の印を用いている。同時期に日本に亡命してきた黄檗宗の禅僧たちによって、新しい篆刻がもたらされ広く伝わった。

■三顆一組

印は、一顆(か)、二顆と数え、冠帽印(書画の書き出しに押す印)、姓名印、雅号印の三点を、三顆一組と呼びます。姓名印と雅号印を併用するときは、姓名印を上に押します。他に遊印と呼ばれる印は、中国漢代に始まった吉語印に端を発し、後に好きな詩句や語句を選んで円、楕円形、三角形などバラエティに富み冠帽印などに使われたり、独立した作品としても鑑賞されています。

<創作印で日常を拡げてみましょう>

創作印

■印泥の使い方

1、

ご使用前に必ず同封の練り棒(ヘラ)でよく練って下さい。へらが無い場合は折れにくい棒状のものをお使い下さい。練らないで使われると表面が乾いて印に付きにくくなります。

2、

印に印泥を付けるときは、あまり強く押し付けないで軽く叩くようにして印面に均-に付くようにして下さい。強く押し付けますと印面や側面に余分な印泥が付き失敗の原因になります。

3、

印を押すときは、作品の下に印褥(印押台)を敷くか雑誌などの平らで少し弾力のあるものを敷いてください。上下、左右にクネクネと押さないで、垂直に押してまっすぐに引き上げてください。均-に付き易くなります。クネクネしますと印がズレたりまだらになったりすることがあります。

4、

印は一回ではなかなかうまく押せませんので印矩(いんく・T型やL型の定規)を使い、二・三回押して仕上げる方法もあります。

5、

冬場は少し硬くなりますが、少し暖めていただければ柔らかくなります。

■現代に生きる篆刻

中国の明時代に始まったとされる"石のハンコ"は「方寸の中の宇宙を宿す」と言われ、時の文人達にもてはやされ、篆書体(てんしょたい)を彫ったことから「篆刻」と呼ばれています。日本には江戸時代初期に伝えられ、中期頃からは文人の趣味として大流行しました。以来、書画作品にはなくてはならないものになりました。そして、篆刻そのものが芸術として確立しております。現在では書画作品以外にも自分のマークとしてハガキ、書類、書簡、蔵書、等にも押されています。また、最近では芸術家だけではなく、趣味として篆刻される方も増えています。

■硯の名称

・墨池(ぼくち)磨った墨をためておくところ。池、海、硯沼、硯凹、ともいう。
・丘  (おか)墨を磨るところ。陸、岡、墨堂、ともいう。
・縁  (ふち) 硯の周辺の囲い部分。
・硯側(けんそく)硯の側面。硯旁、ともいう。
・硯面(けんめん)硯の表側のこと。硯表、ともいう。
・硯陰(けんいん)硯の裏側のこと。硯背、ともいう。
・落潮(らくちょう)丘から墨池へ入る斜面。舌、ともいう。

硯の名称

■硯の手入れ

使用した硯は、墨のカスが残らないようにきれいに洗い、よく乾燥させた後硯箱にいれ保管してください。洗わずにおくと、「鋒鋩(ほうぼう)」の目を埋めてしまい、墨を磨ってもおりが悪くなり、墨色が出なくなります。墨のおりが悪くなった時は硯砥石で磨き「鋒鋩(ほうぼう)」を研ぎ出して下さい。長い間使用していない硯を使用する際は、前もって水を張った容器に硯を浸け、硯によく水を含ませた後使用するとよいでしょう。

■硯・墨池の保温シート

膠の水溶液は、温度が高いと液状になり低温ではゲル化してゼリー状になる性質を持っています。硯や磨墨する水の温度が低いと、そのような墨を使用しても微粒子に分散できず、美しい墨色が得られません。この保温シートは、気温10℃のとき約30℃、気温20℃のとき約37℃で安定しますので硯をあらかじめ温めておくことによって磨墨時間も短縮されるとともに、容易に微粒子分散ができ固形墨の持つ本来の墨色を出すことができます。また、磨墨液の入った墨池を保温することにより磨墨液のゲル化を防ぐことができます。天然膠製の液体墨を使用する際にも、保温シートの上で墨液を使用するといつも最適の状態で墨液の特色を発揮できます。